[越智木高校第二文芸同好会-21-]

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 小一時間呼称会議を行った後も全員で喋っていたが、タケ先輩の「昼飯どうする?」の一言で新歓食事会の流れになった。
 高校から徒歩二十分程度の所にある駅、その目の前に建つハンバーガー店へと移動。椅子と机を集めて五人分の席を作った。タケ先輩と耶弥先輩、それに付き添う形で慶介さんが注文しにいってしまった。
「なんというか、ちょっと変な気分ですね」
「もてなしに慣れていない? この年で慣れてたら住む世界が違うよ」
 主賓で後輩が気を使わないように、とメニューは注文組任せの会食らしい。
「それは、そうですね。そう言えばタケ先輩と耶弥先輩ってやっぱり付き合ってるんですよね」
「あはは、気になる?」
「寧ろあれで付き合ってないとしたら面白いですね」
 都賀先輩と二人を見やる。耶弥先輩はタケ先輩の腕に抱きついてきゃっきゃきゃっきゃとはしゃいでいる。どこから見てもカップル。そうでないのならテンションの上がった子供とその親だ。
「ま、正解。気付かないほうがおかしいけどね」
「ですよね。慶介さんは居づらいだろうなぁ」
「あの二人と行動するときは気を付けてね。健之さんは空気読むけど、会長は関係なしに甘えるから」
「肝に銘じておきます」
 他愛の無い会話をして注文組が帰って来るのを待ち、それから商品が全部運ばれて新歓の開始となった。
「やーが使い物にならないから春、乾杯の音頭を」
「はい。それでは、伊織君の二文入りを祝いまして、乾杯」
 乾杯、と合唱して手に持つソフトドリンクの紙コップを掲げた。
「んじゃ、形式的なものだけど、各々自己紹介を。やー、引っ付いてないで参加参加」
「はーい」
 と、すぐに顔つきが会長のそれに変わった。
「第二文芸同好会の葛生耶弥、三年です。よろしくね、いおりん」
「よ、よろしくお願いします」
 いおりんはまだ慣れそうも無い。
「次、副会長」
「はい、紹介された第二文芸同好会副会長の都賀春です。会長がああなっちゃうから副会長は健之さんではなくて私なの、これからよろしく」
 都賀先輩が投げた視線の先には既に猫と化した耶弥先輩の姿があった。しかし、そういう理由で副会長になっていたのか。なるほど。
「やーの飼い主と運営補佐の間々田健之、よろしく」
「岩舟慶介……肩書きないけどよろしく」
 上級生の挨拶が終わり、全員の視線が僕に集まる。何故かタケ先輩と耶弥先輩の目は何かを期待しているそれだ。
「えっと……大平下伊織です。これからよろしくお願いします」
 結局、僕は期待に答えられなかった。挨拶が終われば無法状態。好き放題に食べ、好き放題に喋くる会食となった。それはとても楽しいもので、改めて二文が好きになった。

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