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T県内でも有数の進学校であるここに、とある同好会があった。
その名は「第二文芸同好会」、通称「二文」と言われる存在である。
第二という名から想像出来る通りに文芸部が存在しているが、そこに居られないはみだし者達が集まる、奇怪な同好会だ。
現在の在籍生徒数は5名。その内1人は兼部しており、規則により新規の会員を得られなければ存続が危ぶまれる微妙な同好会であった。
時は四月、卒業生が去り残された5人は意気込んで新入会員の確保に――勤しんでなかった。
そもそも物好きの集まりであり、顧問の好意で借りている社会化教室で各々好き勝手にしているだけ。だから急いで集める事をする必要が無かった。
同好会が発足して4年目の春。
文芸部は今年も多くの入部希望者に辟易としていた。
文芸部のOBが若年世代に支持されている作家として名を馳せたのが原因か、ここ数年入部希望者が多い。
だが、部室の席には限度がある。そのため入部者を制限している。
今年も殆どの希望者を落とす事に文芸部部長は肩を落とした。
何せ、選考を自分1人に任されたのだから荷が重いとしか言いようが無かった。
罪悪感を感じつつ、一つ一つ丁寧に入部テストとして提出された原稿を読んでいく。
そして次々に不採用の印をつけていく。
1人、目に留まる者があった。単に名前が珍しいだけの事だ。
そして原稿を読んで、また不採用の印をつけた。
それが、始まりになるとは誰も予想していなかった。
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